スポラバ

【日米野球で注目】大谷翔平の獲得合戦は始まっている! 速く、そして動くストレートの威力。



 

ootani

 

日米野球の一つの側面に、日本人選手のメジャーへの品評会という性質がある。

11月12日の京セラドームで行われた第1戦でも、ネット裏にはメジャーのスカウトが20人近く陣取って、スピードガンとビデオを手に、熱心に日本人選手のデータ収集に精を出していた。

もちろん彼らのお目当ては今オフにメジャー移籍があるかもしれないオリックスの金子千尋投手や、これまた近い将来にメジャーに移籍するであろう広島の前田健太投手ということになるのだろうが、その中でちょっと異彩を放っていたのが日本ハムの大谷翔平投手への熱い視線だった。

「ボールに慣れていないため、ストレートが高めに浮いている印象があった。それでも素晴らしいスピードだったし、魅力は十分に伝わった」

「今日、一番、印象に残った選手はオータニだ! 素晴らしい真っ直ぐを投げる」

すでに水面下で始まっている、大谷の獲得合戦。

ただ、こんなスカウトたちの絶賛の声の中で、ことさら慎重な姿勢を崩さなかったのがフィラデルフィア・フィリーズのスカウトだった。

「彼は日本の球団が保有権を持つ選手だから、コメントはできない」

当たり前といえば当たり前の話である。ただ大谷のメジャー移籍が現実的になるのは、まだ4、5年は先のことなのだ。そんな選手に保有権を持ち出してコメントを拒否するところに、逆にこのスカウトの“本気”を感じるのである。

「この選手は本気で取りにいく価値のある選手だから、たとえ社交辞令的な言葉であっても、将来に付け入られるようなスキは与えたくない」

生き馬の目を抜くようなメジャーリーグでの大谷の獲得合戦は、実はすでに水面下で始まっていると感じた場面である。

そして、それぐらいにメジャーのスカウト達を本気にさせる鮮烈な“デビュー戦”だった。

 

150km台後半のストレートに、球場からため息。

侍ジャパンが2点をリードした8回。京セラドームに「ピッチャー、大谷」の場内放送が流れると、スタンドからは大歓声が沸き起こった。

「マウンドに行くまでは緊張しましたけど、対戦する中ではそんなに(緊張感は)なかったかなと思います」

最初の打者のアルシデス・エスコバー内野手には初球に152kmのストレートでストライクをとると、155km、153kmとストレートを続けて詰まった右飛。2人目のデクスター・ファウラー外野手にはいきなり157kmとスピードアップした真っ直ぐから入り、3球目にスライダーと5球目にスプリットを挟んで、他の4球はすべて150km後半のストレート。最後は156kmの内角真っ直ぐでこれまた詰まらせて左翼へのフライに打ち取った。

そして最後の打者はベン・ゾブリスト内野手。初球にいきなり内角低めに外れたが159kmが出て、球場は大きなため息に包まれた。そして2球目も158kmで、これまた「ホーッ!」というなんとも言い難いため息がドームを包み、最後もインコースへの158km。これにゾブリストも詰まって一塁へのゴロに倒れた。

「的は大きくて投げやすかったですけど、自分の投球ではなかった」

試合後に大谷は、初めてのメジャーリーガーとの対戦の中で、自分の投球をこう分析した。

3人の打者を振り遅れや詰まった打球で打ち取った大谷。

全12球中でストレートが10球というパワーピッチは、1イニング限定の登板ということでマウンドに上がる前から嶋基宏捕手と相談して決めていたことだった。

初めてのメジャー球。マウンドもこの大会用に特別にメジャー仕様の固くて傾斜のあるものに改造されている。

「マウンドに関してはウチ(札幌ドーム)も固いのでそれほど違和感はなかったですね。ボールに関してはブルペンで投げていたより、自分の感覚としては良くなかった。ただ、真っ直ぐで押し込めたのは良かったと思います」

対戦した3人の打者を、いずれも振り遅れのファウルや詰まらせた打球で打ち取ったこと。それが大谷の一つの自信になったことは確かである。

「年齢を考えても素晴らしい。100マイル(161km)近いボールを投げていたし、強い印象を受けた」

こう語ったのはMLBチームを指揮したジョン・ファレル監督だった。

スポンサーリンク

 

速いだけでは、彼らを押し込むことはできない。

もちろん真っ直ぐの速さは大谷の武器であり、その点はメジャーリーガーたちも大いに認める部分である。

ただ、実際に対戦したゾブリストは速さを認めた上で、しかし「それはスペシャルではない」としてこんなことを言っている。

「彼はとても速いし素晴らしいアームの持ち主だ。ただ、僕らはいつも速いボールを見ているからね。初めて見るボールというわけじゃないよ」

そうなのだ。

確かに速いが、この程度のスピードはアメリカではマイナーでもいる。ただ速いだけでは、そうは簡単に彼らを押し込むことはできないはずなのだ。しかし、それでも大谷は3人の打者を確実に打席で詰まらせていた。

その理由のヒントになりそうなのがエスコバーのこんな言葉ではなかっただろうか。

「全部90マイルを超えていたね。それとボールがよく動いていた。彼ならメジャーでも活躍すると思うよ」

本人はボールが合わずに「(真っ直ぐが)沈んでいた」と不満を口にしている。それが「自分の投球ではなかった」という言葉に結びついているのだろう。

ただメジャーの選手たちにとっては、それなりのスピードがあって、しかも動くことこそ、大谷という投手をやっかいにさせた一番の原因だったのである。

鹿取コーチ「いい具合に動いていたね」

その点を認めるのは、侍ジャパンの投手陣を預かる鹿取義隆投手コーチだった。

大谷が打者をことごとく詰まらせた原因は何だったのか? ボールの出所が見にくいとか、スピード以外に何か秘密があったのではないか? この質問に鹿取コーチはひとこと、こう答えている。

「いい具合に動いていたね」

本人は不満を口にしたが、そのボールの動きに意図した部分がなければ、意思が通ったボールでなければ、これほどまでに相手をねじ伏せることは不可能である。ただ速いだけではなく、手元で動く。どうしてもスピードガンの表示ばかりに目が行きがちだが、この右腕の真っ直ぐの威力は、数字以上にそこにある。

この日対戦したメジャーリーガーたちは、そのことをしっかりと打席で感じ取っていたわけである。

次回は18日の札幌ドームで、先発の予定。

「次は先発ですし、今回よりも変化球の割合も多くなると思います。何回かブルペンに入るので、その中で修正していきたい」

次回は18日の札幌ドームでの第5戦に先発の予定だ。

断っておくが、筆者は投手・大谷の才能ももちろん素晴らしいと思っているが、それ以上に打者としての大谷に注目し、打者としての道を極めて欲しいと願っている。その点では、今回の日米野球でも打者・大谷がメジャーの投手にどんなバッティングを見せるのかを、見てみたかったのが正直な気持ちだ。

加えてどんどん投手にシフトしていく“二刀流”には賛成しかねるのだが、それでもそれは投手・大谷の才を否定するものではない。

今回の日米野球では投手・大谷しか見ることができないのだ。それなら次の登板でメジャー相手にどんなピッチングを見せてくれるのか、ワクワクしながら第5戦を楽しみにするしかないのである。

 

 

※著作権その他の権利を有する記事コンテンツを、Number webで配信したものです。

筆者=鷲田康氏

 


スポンサーリンク

▼「この記事を友達に自慢しよう」

▼「いいね!」を押して最新記事をいち早くゲットしよう!▼